「今日はね、第三の愛人を連れて来たんですよ」柴田先生は開口一番こうおっしゃった。一瞬どきりとしたが、単なる冗談だった。御一緒だったのは勿論、御夫人だ。
柴田先生はよく呑まれる。赤い顔をしながら、いろんなお話をされた。かすみさんのお喋りを聞いてはよく笑い、長崎にまつわる歌を聴けば「これは長崎の人にしかわからんとですよ」と遠い目をして語り、宗教の持つ排他性については厳しい批判の言葉をぶつけられる。一言で言うなら大きな木のような方だった。優しさを土台にし、豊かな実をつけた木、それが私が表現しうる限りの、「ライオン」の第一印象だ。
この柴田先生との出会いが、私達の歯車の潤滑油となったようだ。春休みから企画書の作成を開始し、少しずつ内容が具体化してきた。新学期が始まると、企画員が集まってきた。アドバイザーには頼りになる先輩がついてくれた。一生化の森下先生、第二外科の松崎先生も協力してくださるという。
そんなある日、日南病院にいらっしゃる柴田先生に電話をした。日南で会談を設けてくれませんかと。先生は快諾してくださった。
さあ、準備は整った。ライオンの先生に会いに、日南へ行こう!
続。 ◆次へ
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